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 2014年11月 

小林大吾 / 小数点花手鑑 

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本日は一風変わったCDの感想です。

ポエトリー・リーディング・アーティスト
小林大悟さんの4thアルバム「小数点花手鑑」。(しょうすうてんはなのてかがみ)

今年の夏に発売されたCDなのですが
ボクがこの半年間で最も聴いたCDの1枚です。

「ポエトリー・リーディングとはなんぞや?」
という話なんですがその意味の通り「詩を読む」事です。

本作を含めた小林大悟さんのスタイルとしては
HIP HOP的なバックトラックに合わせて自作の詩を読んでいく。

「はて?それではRAPと同じなのでは?」

という当然の疑問が生まれてくる訳ですが
アーティスト本人のスタンス…というか
ぶっちゃけ「本人がどう名乗るのか」という部分が大きい。

しかし明確な区切りが難しいものの聴いてみると確かに違いを感じます。
過去の作品まで遡ると定義付けが出来ないのですが
本作に収録されている楽曲群については
一般的に RAP としてイメージするものとの違いが明確。

一つは扱っているテーマ。

ボクはRAPにあまり詳しくないですが一般的にイメージされる
RAPの詩はスタイルはいろいろあれど基本は
自身の考えの表明・主張のような気がします。
あっコレはRAPに限った事ではありませんね。
今の時代の主流といいますか詩の付いた音楽全般に言えます。

表現の形は違えど「こう思う・思った」「こう考える・考えよう」と
「主観」で描かれている詩がほとんどの様に思います。

本作「小数点花手鑑」に収録されている詩は「客観」で描かれている。
「主観」として書かれている詩についてもあくまでも
詩の登場人物の「主観」であって作家本人の主観ではない。

こういった詩の楽曲を歌う人でボクが思い浮かんだのは
テイストは全く違いますが矢野顕子さんですね。
「CHILDREN IN THE SUMMER」「Super Folk Song」を
イメージするとちょっとニュアンスが掴めるかも。
(※音楽のテイストは全く違いますので…)


もう一つはリーディング。

前述しましたが小林大吾さんの作品には
HIP HOP的なバックトラックがありますので
一般的な詩の朗読とは違いリズムは音楽的です。

しかし一般的な楽曲での歌唱はメロディがありますよね。
メロディがある事で本来の口語表現とは違う抑揚になります。

例えば口語では抑揚のない「明日」という言葉が
メロディに乗せる事で「あ↑し↓たぁ〜」となったり。(伝わりますかね?)
これは口語的なスタイルのRAPであっても多少はありますよね。

過去の作品では違うアプローチもあるようですが
本作「小数点花手鑑」に関しては徹底した
口語イントネーションで全編が語られていく。


客観的に描かれる詩。
徹底した口語イントネーション。


この2つで作られた本作を聴いた人は
短編小説を読んだのと似た印象を受けると思います。

そして一篇一篇が独立した短編の物語でありながら
アルバム全体を通して考えると一つのまとまりを感じる
非常に優れた短編集小説のような美しさがあります。

ズンと重い内容の作品もありますが
全体としてはアイロニカルなユーモアを交えた作品。
その短編小説の様な詩の中に突然スルドイ言葉が現れる。

非常に素晴らしいと思います。